ホサナ通信(1981年8月2日号)

 「お母しゃーん、汚れたぁ。きれいな服を着せさせてェ!」
 玄関で、美和(三才)の叫ぶ声。やれやれ、またです。今日はこれで三回目。二,三日続いた大雨であちこちに水たまりが出来ました。そこが彼女のいい遊び場になっているのです。
 先日も、出かけたはずの主人が戻ってきて、「美和が水たまりでびしょびしょになっているから、着替えさせた方がいいぞ」と言って、また出て行きました。慌てて言われた場所に駆けつけると、二,三人の同い年くらいの男の子に混じって、美和が遊んでいます。
 そこは水はけの悪い場所で、直径二メートルくらいの水たまりが出来ています。その水たまりの真ん中に陣取って、パシャパシャとやっているのが私の娘。あれあれと思いながら見ていると、何を思ったのか、彼女はやにわに腰を落とし、まさに泳ぐような手つきで、水たまりに顔を付けようとするではありませんか。
 「美和だめよーっ!」思わず大声で叫んで駆けつけた私に、当の美和は口をとがらせて「あーあッ。しぇっかく泳ごうと思ったのにッ。」
 その時の汚れようを思い出しながら玄関に行くと、案の定上から下までびしょぬれ。手には泥まんじゅうをしっかり握って立っています。そのままおふろ場へ直行。頭から水をザァーザァー浴びせかけて泥を落とします。洗いながら、なんだか女の子を扱っているような気がしません。することなすことが男の子らしくて、ついつい親の方も扱いが手荒になってしまうようです。
 この間、お風呂の後の一家団らんの時、主人が美和にこんなことを聞きました。「ねェ、美和は男の子かい?女の子かい?」 すると、彼女はパッと右手を上げて、元気よく答えました。「男の子ッ!!」あまりの確信に、私はクスクス、長男はニヤニヤ、次男は(違うよねェ)というような表情で私の方を見ました。
 美和は・・・・と見ると、まわりのそんな様子を察してか、決まり悪そうな小さな声で、「女の子・・・かな?」
 万事がこの調子で、男の子らしい女の子に育っているのですが、そんな彼女も、このごろはやはり女の子らしく、いろいろと手伝いをしてくれます。早天祈祷会のための座布団を並べたり、掃除機を掛けたり、洗濯物をたたんでくれたり。今朝は布団を上げるのを手伝ってくれました。私の考えでは、美和にはまくらとかタオルケットとか軽い物を片付けてもらおうと思っていたのですが、彼女は敷き布団も自分で片付けるつもりでいます。私が手を貸そうとするといやがりますので、たたみ方を教えて見ていることにしました。
 「ヨイショ、ヨイショ」と掛け声を掛けながら、布団の周りを走り回るようにして三つに折りたたんだのはいいのですが、いざ持ち上げようとすると、顔を真っ赤にして力んでみても手に負えないようです。
 「お母さんがしてあげるから」というと、「いや美和がする。でも、ちょっとだけ手伝って」と言います。それで、片端を持ってやることにしました。「ヨイショ、コラショ、ドッコイショ」二人で押入の上の段に押し上げて片付け終わり。美和は得意気に、「今日は、美和がお布団片付けたね。またしてやるからね。」本当は、80パーセントは私の力だったのですが・・・。
 主とともに私たちの負う荷も、主がほとんどを負って下さいますね。
 「私のくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです」(マタイ11:30)

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